今日の診療
治療指針

Ⅲ.尿路感染症の外来治療
藤本卓司
(耳原総合病院・救急総合診療科部長)


A.単純性膀胱炎


‍ Escherichia coliが約80%を占める.S.saprophyticusが第2位を占め,K.pneumoniaeProteus mirabilisなどの腸内細菌が続く.

1.治療

 第1選択は第1~2世代セファロスポリン系またはST合剤であり,3~5日間投与する.

 ケフレックス 1回500mg,1日4回,または

 オラセフ 1回250~500mg,1日3回,または

 バクタ 1回2錠,1日2回

 ビクシリン,サワシリンE.coliの約50%が耐性を示すので第1選択としては勧められない.

 キノロン系薬の3日間投与も有効だが,キノロン耐性の大腸菌が40%以上みられており,安易な使用は慎むべきである.またキノロン系薬は内服薬で唯一緑膿菌に有効な薬剤であり,第1選択として推奨されない.

 ST合剤のバクタ2錠(800/160mg),1日2回,3日間は安価で比較的安全な選択肢であるが,本邦では抗菌薬の中で「警告」付きの薬剤であり,用いにくい.しかし,実際は重篤な副作用の発生頻度は低い.


B.単純性急性腎盂腎炎


 単純性では原因菌の大半がE.coliであるが,尿は採取しやすい検体であり,必ず尿培養を提出する.腎盂腎炎は入院治療となる可能性が高いため,外来の段階で抗菌薬投与前に尿培養を出しておく.

 血液培養も必ず提出する.菌血症の合併頻度は,高齢者60%,若年者16%程度である.

1.治療

 入院治療が基本であるが,やむをえない場合には,キノロン耐性や基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL:extended-spectrum β-lactamases)産生の株を念頭におきつつ,外来治療を行う場合もある.

 市中の尿路感染症に対して,キノロン系薬が万能であった時代は完全に過去のものとなった.地域差はあるが,現在,市中由来E.coliの40%以上がキノロン耐性である.耳原

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