A.病態と疫学
呼吸困難は,進行がん患者の50~70%で認められる頻度の高い症状であるとともに,患者・家族を最も苦しめる症状の1つである.呼吸困難は「呼吸時の不快な感覚という主観的な症状」と定義され,①呼吸運動,②化学的効果,③神経機械的乖離,のいずれかに異常がある場合に発生し(表4図),必ずしも呼吸数や血液ガス検査値の異常を伴わない.
B.診断
1.主観的評価
呼吸困難は主観的な症状であるため,その評価も主観的な評価が重要となる.その際,呼吸困難の強さを定量的に評価するため,痛みと同様にNRS(0~10:0息苦しさがない,10考えられる最悪の息苦しさ)で評価を行い,呼吸困難の生活への影響も評価する.
2.原因の評価
がん患者における呼吸困難の原因は多岐にわたる(表5図).呼吸困難を起こしている原因によっては,特異的な治療が有効な場合があるため,患者の全身状態・予後や希望によって原因検索を行うことが重要である.そのため,問診・身体所見に加え,胸部X線・血液検査(血液ガスを含む)を行い,必要に応じて,心エコーや胸部CTなどを追加する(表6図).
C.治療
1.原因に特異的な治療
がん患者に呼吸困難を起こしている原因が治療可能なものである場合は,それぞれの特異的な治療を考慮する(表7図).ただし,治療を行う判断をする際には,患者の全身状態・予後や治療の希望を勘案して,メリット・デメリットを十分考えたうえで行う必要がある.また,治療を行った際にはその効果を評価し,効果が明らかでない場合は漫然と治療を続けないことが重要である(例:症状は変化ないが,貧血が進行しているので定期的に輸血を行う).
a.上大静脈症候群,がん性リンパ管症が原因の場合
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
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