治療のポイント
・意識障害の鑑別として念頭に置き,動脈血液ガス分析を行う.
・酸素投与を逡巡せず低酸素血症を回避する.
・非侵襲的呼吸療法もしくは侵襲的呼吸療法を用いて呼吸補助を行う.
◆病態と診断
A病態
・CO2 ナルコーシスとは高二酸化炭素血症により中枢神経系の異常(意識障害)をきたす病態である.
・呼吸(換気量)の調整は中枢神経系が命令を出し,神経および呼吸筋が作動し,最終的に呼吸器(肺,気道)で行われるが,このいずれかが異常を起こすと肺胞低換気をきたし高二酸化炭素血症となる.
・健常人では動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇がトリガーとなり呼吸調整が起こるが,普段から高二酸化炭素血症を伴う場合PaCO2 上昇への反応が鈍く,呼吸調整は動脈血酸素分圧(PaO2)に依存する傾向にある.酸素投与によりPaO2 が上昇し低酸素に対しての換気刺激が低下すると換気量低下が起こりさらにPaCO2 が上昇することになる.
・意識障害に至る機序として脳脊髄液中のpH低下が考えられている.これは脳血液関門を通過したCO2 が水と反応し水素イオン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)になることで,H+ が増加することに起因する.
B診断
・高二酸化炭素血症をきたしやすい疾患(閉塞性肺疾患,胸郭異常,神経筋疾患,中枢神経障害など)の患者で意識障害を診た場合,CO2 ナルコーシスを疑うことが重要である.
・意識障害,高度の呼吸性アシドーシス,自発呼吸の減弱が3主症状として知られている.
・一般的に意識障害をきたすPaCO2 の値は80mmHg程度といわれているが,急性変化の場合は低値でも意識障害が起こりうる.
◆治療方針
前述のようにCO2 ナルコーシスは過剰な酸素投与で誘起されるが,低酸素血症による致死的病態を回避するためにも酸素投与を逡巡してはいけない.経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)88%を下回る場合には低