治療のポイント

・バイタルサインチェック，静脈路確保をしてから診療を開始する．

・腹腔内出血を早期に発見するためには，腹部超音波検査が最も有用である．

・婦人科疾患の鑑別では，妊娠や月経などの病歴の確認が重要である．

・バイタルサインが許せば，腹部造影CT（可能ならdynamic CT）検査による責任病変の同定を行う．

・緊急の止血処置が必要と判断すれば，IVR（interventional radiology）もしくは，外科的止血が選択される．

◆病態と診断

A病態

・腹腔内出血（非外傷性）の原因疾患としては，実質臓器（肝臓，脾臓，膵臓）からの出血（腫瘍破裂），管腔臓器（胃・腸管）からの出血，腹部大動脈瘤（多くは後腹膜出血），腹部内臓動脈瘤の破裂，婦人科疾患（異所性妊娠，卵巣出血など）などが挙げられる．

・腹痛・腹部膨満から本症を疑う場合には，バイタルサインを確認しながら診療を進める．

・出血性ショックでは，早期から血圧低下は認めない．脈や皮膚所見などを十分に観察することが重要である．

・腹部超音波検査により出血部位や出血量を推定する．外傷診療の評価で用いられるFAST（focused assessment with sonography for trauma）は，腹腔内出血有無の確認にも有用である．

・大動脈瘤破裂を疑った超音波検査では，心窩部から臍下部まで（腸骨動脈が分岐するあたりまで）を観察する．後腹膜血腫の有無も観察する．

・腹部造影CT（可能な限りdynamic CT）検査を行い，出血源の同定および治療方針を決定する．

・バイタルサインが安定していれば，問診で詳細な既往歴・内服薬（抗凝固薬や，抗血小板薬など）などを確認する．

・婦人科疾患を疑う場合には，詳細な問診と必要時に妊娠反応を行う．

・異所性妊娠の診断には，妊娠反応陽性で腹部超音波検査で胎嚢，卵黄嚢，胎芽の確認ができれば確定診断と