診療支援
治療

脊髄損傷
spinal cord injury
井口浩一
(埼玉医科大学総合医療センター教授・高度救命救急センター)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・頸髄損傷亜急性期に対する自己骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療の実臨床が2019年に開始.現在,市販後調査中.iPS細胞を用いた患者への移植手術も2021年から治験開始.

治療のポイント

・非骨傷性頸髄損傷でも手術適応がある.

・除圧術の有効性に関するエビデンスが増加傾向.

・脊髄損傷完全麻痺であっても,早期除圧術により不全麻痺に改善する場合がある.

・完全麻痺の周術期は集中治療管理が必要で,多診療科間の連係が重要.

・急性期の手術,亜急性期の再生医療,急性期から慢性期までのリハビリテーションなど,病診連携も重要.

◆病態と診断

A病態

・高齢者の転倒による非骨傷性頸髄損傷が増加傾向.

・圧迫・挫滅による脊髄1次損傷と,その後の虚血や炎症による2次損傷がある.

・2次損傷は早期除圧術で軽減可能.

B診断

・急性期は麻痺が大きく変化するため,神経所見の記録が必須.

・神経所見は国際標準のASIA(American Spinal Injury Association)分類を用いる.

・分類表は無料でダウンロード可能(https://asia-spinalinjury.org/international-standards-neurological-classification-sci-isncsci-worksheet/).

・完全麻痺(ASIA A)は,仙髄分節S4-5の感覚および運動機能がともに消失している状態.

◆治療方針

 脊椎損傷の不安定性の程度,脊髄損傷の損傷高位,麻痺の重症度,年齢,併存症の有無など,手術の適応やタイミングに関係する要素は多彩で,施設により手術の判断は異なる.

 手術は必要に応じ,インスツルメンテーションを用いた整復固定を併用するが,早期に坐位獲得,離床を目指すことで,呼吸器合併症を防ぐことが重要.

 手術の有無にかかわらず,頸髄損傷完全麻痺はICUにお

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?