診療支援
治療

穿通性頸部外傷
penetrating neck injury
中江竜太
(日本医科大学大学院准教授・救急医学)

頻度 情報なし

GL改訂第6版外傷初期診療ガイドラインJATEC(2021)

GL改訂第2版外傷専門診療ガイドラインJETEC(2018)

治療のポイント

・頸部外傷において緊急性が高い病態は,気道緊急と大量出血である.

・循環動態が不安定な場合や,hard sign(創部からの気泡や広範囲の皮下気腫,拍動性の血腫,thrillの触知,活動性出血)を認める場合は,気管損傷や血管損傷を疑い,緊急に気道確保や外科的処置を行う.

◆病態と診断

A病態

・広頸筋を貫く穿通性損傷を穿通性頸部外傷という.頸部には気管や頸動脈・内頸静脈などの血管,食道,甲状腺,神経などが集中するため,重要な器官が損なわれやすい.

・頸部外傷において緊急性が高い病態は,気道緊急と大量出血である.気管損傷や血管損傷による血腫の圧迫により,気道の狭窄や閉塞,低酸素をきたす.また,血管損傷により大量出血した場合は,出血性ショックをきたす.

B診断

・確実な気道確保や外科的処置,専門医へのコンサルトが必要となるhard sign(上甲状切痕の沈下や甲状軟骨・輪状軟骨の変形・露出,輪状甲状靭帯の陥凹,大量喀血,創部からの気泡,広範囲の皮下気腫,拍動性の血腫,thrillの触知,ショックを伴う活動性出血,閉塞性ショックの所見)の認知が重要である.

・循環動態が安定しており,soft sign(嚥下障害,変声,喀血,縦隔拡大)のみ認める場合は,CTや血管造影,気管支鏡,または食道損傷検索のための内視鏡や食道造影を行う.

◆治療方針

 過去には,頸部を3つのZoneに分け,輪状軟骨より腹側をZone Ⅰ,輪状軟骨と下顎角の間をZone Ⅱ,下顎角より頭側をZone Ⅲとよび,治療方法が異なっていた.しかし,近年では,循環動態が安定しておりhard signが認められなければ,ZoneによらずマルチスライスCT所見を考慮して,緊急手術などの治療適応を

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