診療支援
治療

鈍的腹部外傷
blunt abdominal trauma
桂 守弘
(沖縄県立中部病院・外科医長)

治療のポイント

・鈍的腹部外傷においては,出血(循環動態の不安定性の有無)と腹膜炎の病態を分けて考える必要がある.

・管腔臓器損傷のCTでの正診率は高くないことを理解し,腸管損傷が否定できない場合には時間をおいた繰り返す診察(serial examination)と,必要に応じてrepeat CT検査を考慮する.

・手術治療と血管内治療の適応,大量輸血療法を含めたdamage control resuscitationの概念を理解しておくことが重要である.

◆病態と診断

A病態

・わが国では,腹部外傷の大部分(90~95%)が鈍的外傷であり,①実質臓器損傷,②管腔臓器損傷,③血管損傷の3つに大別される.

・実質臓器損傷や血管損傷においては,腹腔内出血もしくは後腹膜出血により出血性ショックを引き起こしうる.

・管腔臓器損傷では腹膜炎を引き起こすが,受傷早期には症状が軽微なことがある.また,血性腹水がある場合には,細菌性腹膜炎との鑑別が身体所見だけからでは難しい場合がある.

B診断

1.primary survey

・身体所見:腹膜刺激症状があれば腸管損傷を疑う.シートベルト痕を認めた場合には腸管穿孔の可能性を念頭において精査を進める.

・X線:横隔膜の挙上,横隔膜上のガス像,縦隔の偏位などの所見があれば,横隔膜損傷の可能性を考慮する.

・超音波検査としてFAST(focused assessment with sonography for trauma)で腹腔内出血の有無を確認する.それに加えて,肝臓・脾臓・腎臓などの実質臓器損傷を疑う所見がないかも同時に確認する.重症の骨盤骨折では後腹膜出血が腹腔内に染み出てくるため,腹部臓器損傷からの出血との区別が難しいことがある.

2.secondary survey

・造影CT:循環動態が安定している場合には,高エネルギー外傷においては全身(pan scan)CT

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