診療支援
治療

多剤耐性アシネトバクター [■5類感染症-全数把握]
multidrug-resistant Acinetobacter(MDRA)
草野展周
(まるがめ医療センター・病院長(香川))

頻度 あまりみない

GLコリスチンの適正使用に関する指針―改訂版―2015

GLチゲサイクリン適正使用のための手引き2014

治療のポイント

・保菌と感染症の鑑別が必要であり,感染症例のみ治療する.

・抗菌薬開始前や変更時には薬剤感受性検査が必須である.

◆病態と診断

A病態

・アシネトバクター属菌は弱毒の環境分離菌であるが,乾燥に強いために機器や環境に定着して感染源になることがある.

・免疫低下患者や抗菌薬長期使用中の患者に日和見感染し,多彩な感染症を起こす.

・多剤耐性アシネトバクターは広域β-ラクタム系抗菌薬,アミノ配糖体,フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す.

・感染症法の5類感染症(全数把握)であり,診断が確定した場合には7日以内に届出が必要である.

B診断

・感染症法上では,最小発育阻止濃度(MIC)がイミペネム16μg/mL以上,アミカシン32μg/mL以上,シプロフロキサシン4μg/mL以上のすべてを満たし,感染症の起因菌と判定された場合を“薬剤耐性アシネトバクター感染症”と定義している.

◆治療方針

 抗菌薬治療が主体であるが,種々の抗菌薬に耐性であるため,抗菌薬の選択肢は限定されており,複数の抗菌薬を併用することが多い.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)コリスチン(オルドレブ)注 1回1.25~2.5mg/kg 1日2回 30分以上かけて点滴静注

2)チゲサイクリン(タイガシル)注 初回100mg,以後1回50mg 30~60分かけて点滴静注 12時間ごと

Px使い分けのポイント

・first line:1)が第1選択だが,副作用の発現頻度が高い.

注意 コリスチンは腎障害の患者では適宜減量するか,投与間隔をあけて使用する.

注意 チゲサイクリンは胆汁排泄のため,重度肝障害(Child Pugh分類C)の患者では維持用量を25mgに減量する.菌血症や肺炎では適応がない

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