診療支援
治療

リーシュマニア症
leishmaniasis
濱野真二郎
(長崎大学熱帯医学研究所教授・寄生虫学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・遺伝子検査による病原体の種の同定が重要である.一部の研究機関においてのみ可能である.内臓型リーシュマニア症に対しては,リポソーマルアムホテリシンB(アムビゾーム)の点滴静注が第1選択となる.副作用の出現に注意を要する.

◆病態と診断

A病態

・感染しているメスのサシチョウバエの吸血によって媒介される人獣共通感染症である.

・マクロファージに寄生・増殖するリーシュマニア属原虫によって引き起こされる.

Leishmania原虫はLeishmania亜属とViannia亜属の2亜属に分けられ,約20種の原虫がヒトに病原性をもつ.

・世界99か国に蔓延しており,毎年新たに70万~100万人が罹患し,2万~3万人が死亡している.

・国内では輸入感染症として注意を要する.

・内臓型(kala-azar,カラ・アザール),皮膚型,皮膚粘膜型リーシュマニア症に大別される.

・感染から発症まで,通常は数か月~数年の経過をたどる.

・内臓型はL. donovaniL. infantumなどを原因とする.発熱,悪寒,貧血,全身倦怠,体重減少などを呈し,リンパ節腫大,肝脾腫が認められる.発症した場合,治療しないと致死的である.

・HIVとの重複感染ではそれぞれの感染症の病態が増悪する.

・カラ・アザール後皮膚リーシュマニア症(PKDL:post-kala-azar-dermal leishmaniasis)は,内臓型の不十分な治療例でみられることが多い.

・皮膚型の場合,自然治癒することが多いが,一部の症例では丘疹から中心部の潰瘍形成に至る.皮膚粘膜型の場合,鼻中隔や鼻翼の欠損などをきたす.いずれの場合も瘢痕が残り外観上一生続く問題となりうる.

B診断

・内臓型リーシュマニア症では,臨床症状と寄生虫学的あるいは血清学的検査を組み合わせて診断する.

・内臓型においては肝・脾・骨髄などの網内系組

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