診療支援
治療

有鉤嚢虫症,マンソン孤虫症
cysticercosis cellulosae hominis and sparganosis mansoni
山田康一
(大阪公立大学大学院准教授・臨床感染制御学)

GL寄生虫症薬物治療の手引き-2020- 改訂第10.2版

Ⅰ.有鉤嚢虫症

頻度 あまりみない

治療のポイント

・陳旧性と非陳旧性病巣によって異なる.

・抗寄生虫薬としてはアルベンダゾールが使用される.

・脳有鉤嚢虫症に対してはステロイドの併用を行う.

・抗けいれん薬によるけいれんのコントロールや,脳圧亢進などの症状の緩和も必要となる.

◆病態と診断

A病態

・有鉤条虫は豚を中間宿主とする条虫の一種であり,中国,韓国,ロシア連邦,インド,タイ,中南米,アフリカなどに広く分布している.日本国内感染例の報告はない.

・有鉤嚢虫は有鉤条虫の幼虫であり,ヒトが豚肉に寄生した嚢虫を摂取した場合には条虫症をきたす.

・ヒトが有鉤条虫の成熟卵を経口的に摂取すると,腸管腔内で六鉤幼虫が虫卵から出て腸管壁に侵入し,血流によって身体の各部に運ばれ有鉤嚢虫に発育する.

・ヒトの小腸腔内に寄生している有鉤条虫から虫卵が小腸腔内に出て,上記と同様の経路で有鉤嚢虫となる経路もある.

B診断

・臨床症状と画像検査(CT,MRI)から疑い,血清抗体検査を併用して診断する.

・嚢虫が生存している非陳旧性病巣と長期間経過して嚢虫が死滅した陳旧性病巣に大別される.

・脳有鉤嚢虫症では,初期は病巣周囲に浮腫もなく造影効果に乏しい.時間がたつと嚢虫壁が厚くなり,造影効果や周囲の浮腫が観察される.陳旧性病巣では石灰化がみられる.

・摘出した病巣の病理検査や,遺伝子検査での診断も有用.

◆治療方針

 陳旧性と非陳旧性病巣によって異なる.陳旧性では虫体が死滅しており,抗寄生虫薬投与の適応はないと考えられる.非陳旧性の場合は,抗寄生虫薬の投与を勧める考えと不要とする考えがある.

A有鉤嚢虫症の治療

1.脳有鉤嚢虫症の管理

 けいれんをきたしている症例においては抗けいれん薬を投与する.水頭症をきたしている症例に対する嚢虫の切除や脳室-腹腔シャントなどの外科的療法も重要で

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