診療支援
治療

肺結核
pulmonary tuberculosis
露口一成
(国立病院機構近畿中央呼吸器センター・感染症研究部長(大阪))

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治療のポイント

・結核は標準化学療法により治癒が期待できる感染症であるが,薬剤が有効であることが前提であり,診断時に可能な限り菌を証明する努力を行い薬剤感受性を確認する.

・薬剤耐性誘導を避けるため,必ず多剤併用療法を行う.

・治療期間が長期となるため,副作用のモニタリングと直接監視下服薬治療(DOT:directly observed therapy)による服薬支援が重要である.

◆病態と診断

A病態

・肺結核は結核菌Mycobacterium tuberculosisによる肺感染症である.結核菌は環境には常在せずヒトの体内でのみ増殖するので,感染は必ず感染性肺結核患者からの伝播による.

・感染性肺結核患者の咳嗽により生成された結核菌を含む飛沫核を周囲の健常人が吸い込み,肺胞に到達することにより感染が成立する(空気感染).感染に続いて発病することもあるが,多くはいったん免疫発動により菌が封じ込められた状態となる〔潜在性結核感染(LTBI:latent tuberculosis infection)〕.LTBIのうち1割程度が生涯のいずれかの時点で発病するが,残りの9割は生涯発病しない.結核はあらゆる臓器に発症しうるが肺結核が最も多い.

B診断

・喀痰などのヒト臨床検体から結核菌を検出すれば結核との診断になり全例で治療が必要となるので,診断はクリアである.

・臨床検体に対しては抗酸菌塗抹・培養検査,必要に応じて核酸増幅法(PCR,LAMPなど)を行う.

・菌が証明されなくとも,画像所見,インターフェロンγ遊離試験による感染診断などを参考に臨床診断を行い,治療を行うことがありうる.

・結核は2類感染症であり,診断すれば直ちに届け出が必要である(排菌陰性例を含め).

◆治療方針

 肺結核の標準治療はイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),ピラジナミド(PZA),エタンブトール(

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