診療支援
治療

高齢者の抗血栓療法
antithrombotic therapy in older adults
奥村 謙
(済生会熊本病院・循環器内科不整脈先端治療部門最高技術顧問)

ニュートピックス

・80歳以上で高出血リスクの心房細動患者に対する低用量エドキサバン(15mg)は,年齢やフレイルの有無にかかわらず脳梗塞予防に有用である.一方,Ccrが15~30mL/分の患者では出血に注意が必要である.

治療のポイント

・抗凝固薬,抗血小板薬の出血リスクは双方とも高齢になるほど高くなる.したがって投薬開始前と投薬中は出血のリスク(腎機能障害,肝機能障害,貧血,血小板減少,低体重,出血既往,脳血管障害既往,併発症,他の抗血栓薬,転倒リスク,ポリファーマシーなど)の有無および程度を定期的に評価し,リスク低減をはかるとともに,薬剤の種類と用量(抗凝固薬では減量基準),継続の可否を判断する.

・用法・用量は原則として添付文書に記載された通りとし,服薬アドヒアランスを遵守する.

・投薬中は顕性出血のみでなく,下血の有無に注意する.

・大出血発現時は一時的に投薬を中止し,出血の治療が完了し次第,すみやかに再開する(薬剤,用量を再考する).

A適応

1.抗凝固薬

a.適応と処方例

 脳梗塞リスクを有する心房細動(非弁膜症性):直接経口抗凝固薬(DOAC:direct oral anticoagulant)がクラスⅠ適応,ワルファリンがクラスⅡa適応である(「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」).Ccrが15mL/分未満や血液透析例にDOACは禁忌である.血液透析例に対しワルファリンは原則禁忌であるが,必要な場合はPT-INR<2.0が望ましい〔日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」(2011年)〕.

Px処方例 減量基準(添付文書参照)を満たす例に対して,下記1),2)のいずれかを用いる.

1)エドキサバン(リクシアナ)OD錠(30mg) 1回1錠 1日1回 朝または夕食後

2)アピキサバン(エリキュース)錠(2.5mg) 1回1錠 

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