診療支援
治療

急性腸炎(薬剤性腸炎など)
acute enterocolitis(drug induced enterocolitis)
布袋屋修
(虎の門病院・消化器内科(胃腸)部長(東京))

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治療のポイント

・治療は,脱水や電解質異常などに対する補液や腸管安静のための絶食など,腸炎に対する全身管理が基本である.

・保存的治療と同時に,発症様式・食事歴・海外渡航歴・被疑薬(お薬手帳)などから,感染性腸炎(,「感染性胃腸炎」の項参照)と薬剤性腸炎(被疑薬)の鑑別診断を進める.

・薬剤性腸炎では被疑薬の中止または変更が基本であるため,治療中の疾患の診療情報が必要な場合がある.

◆病態と診断

A病態(薬剤性腸炎)

薬剤の投与により下痢,下血,腹痛などの臨床症状が惹起され,腸管に炎症性変化を生じるものである.

・抗菌薬投与後に起こる偽膜性腸炎と出血性腸炎が比較的高頻度であるが,NSAIDs起因性腸病変,PPIやARBなどによる microscopic colitis,5-FUやイリノテカンなどによる抗癌剤起因性腸炎,αグルコシダーゼ阻害薬(ボグリボースなど)による腸管気腫症,漢方薬による腸間膜静脈硬化症のほか,近年は免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,イピリムマブなど)による免疫関連有害事象(irAE:immune-related adverse event)に遭遇する機会も増加してきている.

B診断

・問診が最も重要である.本人以外やお薬手帳などから,被疑薬の投薬期間と発症の関連情報を得る.

・検体検査:便培養Klebsiella oxytoca,MRSAなど),便中トキシン,生検病理組織.

・画像診断:大腸内視鏡検査が有用であるが,全身状態と病勢を鑑みて単純X線,CT,腹部エコーなど非侵襲的検査も参考にする.

◆治療方針

 薬剤性腸炎の治療の原則は,原因となる薬剤を同定し,薬剤を中止することである.症状が強い場合は絶食とし,補液による脱水や電解質管理を行う.抗菌薬による出血性大腸炎,PPI,NSAIDsなどによる薬剤性腸炎も,薬剤中止と対症療法だけで症状,検査所見はすみ

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