◆病態と診断
A疾患概念,診断基準
・急性肝不全(欧米のacute liver failureに相当する概念):正常肝ないし肝予備能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週間以内に,高度な肝機能障害に基づいてPTが40%以下ないしINR値1.5以上を示すものを,わが国では2011年に“急性肝不全”として定義した.
・病型は,肝性脳症が認められない,ないし昏睡Ⅰ度までの“非昏睡型”と,昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を呈する“昏睡型”に分類される.さらに昏睡型には,症状出現後10日以内に脳症が発現する急性型と,11日以降に発現する亜急性型がある.従来いわれていた劇症肝炎は“急性肝不全(昏睡型)”に含まれる.11日以降56日以内に昏睡Ⅱ度以上となった場合は,亜急性型と分類する.
・一方で,初発症状出現から8週間以降24週以内に昏睡Ⅱ度以上の脳症を発現する症例は遅発性肝不全(LOHF)と診断し,急性肝不全の類縁疾患として取り扱う.
・2018年の厚生労働省研究班にて,新たにacute-on-chromic liver failure(ACLF)の診断基準案を作り,2022年にこの診断基準は重症度分類も妥当なことがわかり,正式に診断基準として用いることになった.
・ACLFの診断基準:Child-Pughスコアが5~9点の代償性ないし非代償性肝硬変に,アルコール多飲,感染症,消化管出血,原疾患増悪などの増悪因子が加わって,28日以内に高度の肝機能障害に基づいて,PT-INRが1.5以上ないし同活性が40%以下で,血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上を示す肝障害をACLFと診断する.なおその重症度に関しては,肝,腎,中枢神経,血液凝固,循環器,呼吸器の臓器障害の程度に応じて4段階に分類する.
・肝硬変の病態のなかで,ACLFに対し,28日以降にゆるやかに肝不全が徐々に進行する病態をchr
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