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治療のポイント
・薬物性肝障害の治療の基本は被疑薬の中止である.
・免疫チェックポイント阻害薬(ICI:immune checkpoint inhibitor)による免疫関連有害事象(irAE)としての肝障害は,CTCAE v5.0による重症度判定に基づいて治療を行う.その基本はICIの休止とステロイドである.
・黄疸やプロトロンビン時間延長などの肝不全徴候がみられた場合は,専門医と連携し厳重な全身状態管理が必要である.
◆病態と診断
A病態
・薬物性肝障害は一般型と特殊型に大きく分類される.一般型は用量依存性の中毒性と予測困難な特異体質性に分類され,後者はさらにアレルギー性と代謝性に分類される.
・中毒性は薬物やその中間代謝物が直接的に肝細胞を傷害する肝障害であり,特異体質性は個人の特異体質に基づく肝障害で,臨床的に多くみられる.
・特殊型は薬剤に起因する脂肪化,腫瘍形成,血管病変やHBV再活性化などが含まれる.ICIによる肝障害は特殊型に分類され,自己免疫機序を介した傷害が想定されている.
B診断
・発熱・皮疹・全身倦怠感などの症状がみられることもあるが無症候例も多い.
・薬物性肝障害の診断は,薬物服用と肝障害発症/消退までの時間的関係,他の要因の除外の2点が重要である.
・処方薬以外に,民間薬,健康食品,漢方薬などでも発症するため詳細に問診する.
・診断にはDDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングを用いる.ALT,ALPから肝細胞障害型,胆汁うっ滞型,混合型に病型分類を行い,発病までの期間など8項目でスコアリングする.
・鑑別すべき疾患としては肝炎ウイルス(A,B,C,E)感染症,EBウイルス感染症,サイトメガロウイルス感染症,アルコール性肝疾患,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性胆管炎,脂肪性肝疾患,胆道疾患,ウィルソン病,ヘモクロマトーシスなどがある.
・ICI
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