診療支援
治療

肝膿瘍(細菌性)
liver abscess(bacterial)
池上 正
(東京医科大学茨城医療センター教授・消化器内科)

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治療のポイント

・比較的小さいものは抗菌薬投与のみで消失する場合もあるが,多くは経皮的ドレナージを必要とするため,処置が可能な施設に転送するべきである.

・血液培養・ドレナージ成分の培養を積極的に行い,起因菌の同定を行うべきである.

・膿瘍の原因となった基礎疾患について追求すべきである.

◆病態と診断

A病態

・肝膿瘍はさまざまな病原体が感染し肝臓に膿瘍を形成する疾患である.病原体の侵入経路としては,①経胆管的,②経門脈的,③経動脈的が考えられる.

・①については,胆嚢炎が肝床部に直接波及して膿瘍を形成することもあるが,下部胆管の狭窄のために起こる胆管炎が肝実質に波及して起こることが多い.肝癌に対するラジオ波凝固術や肝動脈塞栓療法などのあとに発生する肝膿瘍は,内視鏡的乳頭切開術や胆管空腸吻合を受けた患者で発生リスクが高いことが知られている.

・②については他の腹腔内臓器の感染,すなわち膵炎,憩室炎や虫垂炎などのほか,炎症性腸疾患が先行して肝膿瘍に至る症例が報告されている.

・③について,皮膚や齲歯感染からの血行性転移も知られ,起因菌同定の情報価値が高い.

B診断

・悪寒戦慄を伴う発熱・右季肋部症状がみられるのが典型的だが,症状を呈さない症例も多い.血液検査ではCRPの上昇,白血球数の増加,AST・ALT,γ-GTPの増加をみることが多いが,疾患特異的ではない.原因不明の発熱患者をみた際に想起すべき疾患の1つである.

1.検査

・画像診断としてまず腹部US,腹部CTを行い膿瘍の有無を確認する.造影剤を使用した場合,膿瘍周囲の造影効果(rim enhancement)と,内部の隔壁の造影効果がみられる.一般的には辺縁が不整で多房性・多発することが多い.悪性腫瘍との鑑別が問題となることがある.

・細菌学的評価が重要な疾患であり,できるだけ抗菌薬投与開始前に血液培養2セットに加え膿瘍穿刺液の

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