診療支援
治療

高K血症,低K血症
hyperkalemia,hypokalemia
常喜信彦
(東邦大学医療センター大橋病院教授・腎臓内科)

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治療のポイント

・血清カリウム(K)値は心筋細胞の静止膜電位を規定しており,その濃度異常は致死性不整脈の原因となるため,重症の場合,緊急性治療の必要性が高い病態である.

・重度のK濃度異常(6.0mEq/L以上,3.0mEq/L未満)では12誘導心電図による評価を行う.

・Kの摂取,Kの排泄,細胞内外の移動,どの病態が発症に関与しているかを常に念頭におく.

Ⅰ.高K血症

◆病態と診断

・腎機能が正常であり,Kの排泄機能が保たれていれば,単にK摂取が多いのみで高K血症となることはまれである.

・高K血症の原因は複合的なものが多く,多くの場合排泄の障害である腎機能障害を伴う.また細胞内Kが細胞外へと移動するような病態も確認する.

・薬理作用として,Kの排泄が低下する薬剤(特にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害薬)が原因となる.

・溶血などによる偽性高K血症が疑われる場合は,再検を行う.

◆治療方針

 Kの絶対値,自覚症状(しびれや脱力感,無症状のこともある),心電図所見から重症度の判断を行い,緊急性治療の適応を判断する.

A重度の高K血症に対する緊急治療

 6.5mEq/L以上の高度のK上昇,自覚症状,心電図変化,不整脈を認める場合には緊急治療の適応となる.緊急時の治療は,①致死性不整脈の発症予防,②K濃度を下げる治療,③Kの排泄促進,④原因の排除,を行う.

Px処方例 下記の1)~5)を順に用いる.

1)グルコン酸カルシウム(カルチコール)注 1回10mL 不整脈がある場合には心電図をモニターしながら,2~3分かけて静注もしくは希釈して点滴静注.必要に応じて繰り返す保外

2)インスリンヒト(ヒューマリンR)注 1回10単位 10%ブドウ糖液500mLに溶解し1時間以上かけて点滴静注,あるいは1回10単位を50%ブドウ糖液50mLに溶解し5分間かけて静注(グルコースインスリ

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