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治療

代謝性アシドーシス
metabolic acidosis
鶴屋和彦
(奈良県立医科大学教授・腎臓内科学)

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◆病態と診断

A病態

・代謝性アシドーシスは,代謝的な要素による酸の増加(産生過剰か排泄低下)により,体内の重炭酸イオン(HCO3-が減少し酸血症(pH<7.35)が起こる病態である.

アニオンギャップ(AG:Na-Cl--HCO3-;正常値は12±4mEq/L)が開大する場合と開大しない場合がある.

B診断

・血液ガス検査でpHの低下とHCO3- の低下,二酸化炭素分圧(PaCO2の代償性低下が認められる.混合型酸塩基平衡異常に注意する.

・代謝性アシドーシスの代償反応の予測値(PaCO2=1.5×HCO3-+8±2)を計算し,実測値と一致すれば呼吸性代償が正常,実測値が小さければ呼吸性アルカローシスの合併,実測値が大きければ呼吸性アシドーシスが合併していると判断する.

・AGが開大していれば,血中に不揮発性酸が増加している病態(糖尿病性ケトアシドーシス,アルコール性ケトアシドーシス,乳酸アシドーシス,高度腎不全およびアスピリン中毒)が疑われ,AGが開大していなければ,尿細管性アシドーシスや下痢によるHCO3- の体外への喪失が疑われる.

・ΔAGとΔHCO3- を比較し,ΔAG>ΔHCO3- であれば代謝性アルカローシスを合併,ΔAGとΔHCO3- が等しければ純粋な代謝性アシドーシス,ΔAG<ΔHCO3- であればAG非開大性アシドーシスを合併していると考えられる.

◆治療方針

 代謝性アシドーシスの治療は,基礎疾患の是正が基本となる.

A基礎疾患の治療

1)乳酸アシドーシス:ミトコンドリア異常症ならばビタミンB1 やピルビン酸ナトリウム投与など

2)糖尿病性ケトアシドーシス:インスリンによる補正

3)アセトン血性嘔吐症:ブドウ糖輸液

4)有機酸代謝異常:たんぱく質制限,カルニチン投与,ブドウ糖輸液,高アンモニア血症の治療など

B急性期の治療

 代謝性アシドーシスの治療の原則は,

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