診療支援
治療

鉄欠乏性貧血
iron deficiency anemia(IDA)
生田克哉
(北海道赤十字血液センター部長)

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ニュートピックス

・近年,使用可能になったクエン酸第二鉄(リオナ)は,嘔気・嘔吐など消化器症状が従来の経口鉄剤より少ないと報告され,長期内服治療への期待が持たれている.

・1回あたりの投与可能鉄量が多い静注鉄剤として,カルボキシマルトース第二鉄(フェインジェクト)に加え,デルイソマルトース第二鉄(モノヴァー)も使用可能となった.

治療のポイント

・小球性貧血と血清鉄低下だけではなく,血清フェリチン値が低値であることまで必ず確認してから鉄剤投与を行う.

・鉄不足に陥った原因を精査し処置をしなければ,真の診断・治療にはならない.

・最も多い原因は出血であるため,消化管内視鏡検査や婦人科的疾患の検索は常に積極的に行わなければならない.

・鉄剤投与は経口投与が基本であるが,必要に応じて静注鉄剤の検討や,栄養学的アプローチを併せて行う.

・鉄剤投与は血清フェリチン値正常化まで継続し,その後も貧血の再発には留意する.

◆病態と診断

A病態

・体内には3~5gの鉄が存在し,約7割が赤血球のHb鉄として利用されている.

・われわれの体には,鉄を能動的に体外に排泄する機構が備わっておらず,生理的な鉄の喪失は1~2mg/日程度であり,鉄の吸収もわずかな喪失を補うための1~2mg/日程度しかない.つまり,鉄代謝はほぼ閉鎖的回路であり,赤血球造血・破壊を中心として,鉄は体内で利用・再利用が繰り返されている.

・しかし,鉄を多く含む赤血球が出血で体外に失われると,体内の鉄は減少し,Hb産生に利用可能な鉄が不足し,鉄欠乏性貧血が生じる.男性では消化管出血,女性では月経や不正性器出血が主な原因となる.

・妊娠中の女性や成長期の小児では鉄の需要が増大して鉄欠乏が生じ,極端な偏食,胃全摘後での胃酸低下,ヘリコバクター・ピロリ感染による萎縮性胃炎が鉄吸収障害に関与する場合もある.

B診断

Hb値が低下し,MCVは80fL未満

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