頻度 ときどきみる
GL再生不良性貧血診療の参照ガイド令和4年度改訂版(2023)
治療のポイント
・軽症と,輸血を必要としない中等症(重症度分類stage 1~stage 2A)に関しては血小板数10万/μL未満でシクロスポリン(CsA)による免疫抑制療法を開始し,CsAに対しての反応性がなく輸血の必要がない症例にはトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)を併用する.TPO-RAを併用しても治療効果が得られない場合はメテノロンまたはダナゾール(保険適用外)への変更を考慮する.
・重症度stage 2B以上の症例ではウサギ抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG:antithymocyte globulin),CsA,エルトロンボパグ(EPAG)の併用療法もしくは造血幹細胞移植(骨髄移植を推奨)を行う.症例の年齢,好中球数,免疫抑制療法の奏効予測因子,長期的なQOLなどを踏まえて総合的に治療を選択する.
◆病態と診断
A病態
・再生不良性貧血(AA)の医療受給者数(有病数)は10万人に8.3人で,発症率は10~20歳代と70~80歳代でピークが認められ,高齢のピークのほうが大きい.欧米諸国と比べて日本を含むアジアは2~3倍発症率が高いとされている.
・AAにおいて造血幹細胞が減少する機序として,造血幹細胞自身の質的異常と,免疫学的機序による造血幹細胞の傷害の2つが重要と考えられている.
・AAの中には,染色体異常を認める症例があることや,一部の症例において顆粒球にクローン性細胞集団(クロナリティ)を認め,BCOR,BCORL1,PIGA,DNMT3A,ASXL1変異が高頻度に認められることから造血幹細胞自身の異常が発症に関与をしていると考えられている.
・ATGやCsAによる免疫抑制療法の治療効果が認められること,AA症例ではHLA-DRB1*15:01の頻度が高くこれらの症例ではCsAの反応