頻度 あまりみない〔日本小児血液・がん学会の先天性溶血性貧血登録によると2017~2021年の登録数は379例であり,内訳は赤血球膜異常が240例(63%),赤血球酵素異常が22例(6%),ヘモグロビン異常が117例(31%)であった〕
治療のポイント
・軽症例でも,パルボウイルス感染時は最初から輸血を検討する.
・輸血過剰症に対してはすみやかに鉄キレート剤を導入する.
・脾臓摘出術(脾摘)の適応については病型を確定させてから検討する.
・脾摘後は致死的感染症に進行しやすいことを説明する.
◆病態と診断
A病態
・先天的な単一遺伝子異常が原因で赤血球寿命が低下する貧血の総称である.
・代償性溶血,慢性溶血性貧血,急性溶血発作など多彩な経過をとる.
・黄疸は間歇的で感染・過労・妊娠などストレスがかかると増悪する.
・周産期・新生児期には胎児水腫,早発・遷延性黄疸などが初発症状となる.
・成人期には胆石,ヘモクロマトーシスで診断されることもある.以下に代表的な類型を示す.
1.赤血球膜(蛋白,脂質,糖鎖)異常症
・全体の70%と最も多い.
・遺伝性球状赤血球症が70%とされ,常染色体顕性(AD:autosomal dominant)がその70%,孤発例や常染色体潜性(AR:autosomal recessive)もある.成人発症は40%とされる.脱水型遺伝性有口赤血球症や遺伝性楕円赤血球症もある.
2.赤血球酵素異常症(解糖系酵素異常症)
・グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)欠乏症〔X染色体潜性(XR:X-linked recessive)〕が最多.急性溶血発作として発症する.その他,ピルビン酸キナーゼ(PK)異常症(AR)などが知られている.神経・筋症状を合併する病型もある.
3.ヘモグロビン異常症
・βサラセミア(AD)が最多で,ホモ接合では重症となる.治療を必要とするものは15%程度とされる.その他,不