診療支援
治療

自己免疫性溶血性貧血
autoimmune hemolytic anemia(AIHA)
張替秀郎
(東北大学大学院教授・血液内科学)

頻度 あまりみない

GL自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド令和4年度改訂版(2023)

ニュートピックス

・補体C1sに対するモノクローナル抗体薬であるスチムリマブが,寒冷凝集素症(CAD:cold agglutinin disease)に対して保険承認された.本剤は,CADにおける溶血機序である補体古典経路を阻止することで貧血の改善をもたらす.ただし,赤血球凝集による末梢循環障害については直接の改善効果は期待できない.

治療のポイント

・温式AIHAについては副腎皮質ステロイドが第1選択となるが,CADについては副腎皮質ステロイドの効果は期待できず,保温が基本となる.

・致死的となり得る高度貧血に対しては,緊急対応として輸血を実施する.

・AIHAにはリンパ系腫瘍やSLEなどの基礎疾患がしばしば認められるため,その検索が必要である.これらの続発性AIHAについては基礎疾患の治療が基本となる.

◆病態と診断

A病態

・AIHAは代表的な溶血性貧血である.赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が後天的に産生され,抗原抗体反応の結果赤血球が破壊されることにより発症する.

・自己抗体が赤血球に結合する最適温度により,温式と冷式のAIHAに分類される.

・冷式AIHAのCADでは低温の末梢において寒冷凝集素による赤血球凝集が起き,溶血性貧血に加え,末梢循環不全を呈する.

・もう1つの冷式AIHAである発作性寒冷ヘモグロビン尿症はきわめてまれで,近年はウイルス感染症後に続発する小児例が主である.

B診断

・貧血や黄疸などの臨床症状を認める.さらに,CADにおいては,末梢循環障害による末端のチアノーゼ,レイノー症状などを認める.網赤血球増加,血清間接ビリルビン値上昇,尿中・便中ウロビリン体増加,血清ハプトグロビン値低下など溶血性貧血で共通に認められる所見に加え,直接クームス試験が陽性となる.

・温式AIHAにおいては,

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