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治療のポイント
・高浸透圧高血糖状態の治療の基本は,減少した体液量・破綻した電解質の補正,および適切なインスリン投与であり,適切な輸液を行いつつ専門医のいる病院に搬送する.
・高浸透圧高血糖状態であってもケトーシスを伴うこともあるが,通常著しい代謝性アシドーシスは呈さない.
・乳酸アシドーシスに対する治療の基本は原因となる病態への対処と輸液であり,重症例では血液透析を行う.
・乳酸アシドーシスに対する炭酸水素ナトリウムの投与は適応を絞る.
◆病態と診断
A病態
1.高浸透圧高血糖状態
・以前は非ケトン性高浸透圧昏睡という病名であったが,ケトーシスを伴うこともあり,また昏睡になることはまれであるため,高浸透圧高血糖状態と称されるようになった.
・インスリン非依存状態が基本病態であるが,著しい高血糖と高度な脱水に基づく高浸透圧血症に伴う循環不全を呈する.
・高齢2型糖尿病症例において,薬剤に対するアドヒアランス低下,感染症や手術,脳血管疾患など高ストレス環境下への曝露,ステロイド投与による高血糖,利尿薬による体液量減少などを契機に発症しやすい.
・顕著なアシドーシスが存在しないため,多くの症例では発症前長期間にわたって高浸透圧に伴う体液量減少が進行し,顕著な高血糖(>600mg/dL)および高浸透圧(>320mOsm/L)を呈する.
・高浸透圧高血糖状態において軽度の代謝性アシドーシスが存在することがあり,その原因として循環不全の結果としての乳酸の蓄積を認めることがある.
・発症頻度は不明だが,高浸透圧高血糖状態を呈する症例の死亡率は16%とされる.
2.乳酸アシドーシス
・乳酸アシドーシスの成因として,乳酸の産生増加・代謝抑制の2つの機序の両方が重要である.
・乳酸アシドーシスは病態に応じて2つに分類できる.A型(明白な全身の酸素化障害がある場合)とB型(明白な全身の酸素化障害がない場合)