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治療

脂質異常症―高TG血症,低HDL-C血症
dyslipidemia―hypertriglyceridemia,hypo-HDL-cholesterolemia
平山 哲
(東京学芸大学教授・保健管理センター)

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GL動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

GL動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版

ニュートピックス

・「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」にて初めて,随時採血におけるTG基準値(≧175mg/dL)が記載された.

・同GLにて,スタチンにより適切なLDL-C管理下にあるハイリスク患者(冠動脈疾患や脳梗塞の既往,糖尿病など)でのイコサペント酸エチル(EPA)追加併用療法が推奨されている.

・2022年に,ペマフィブラート(選択的PPARαモジュレーター;SPPARMα)とフェノフィブラート(フィブラート系薬剤)の「禁忌」と「慎重投与」の注意事項が改訂された(「治療方針」C4.参照).

治療のポイント

・高トリグリセライド(TG)血症と低HDL-C血症は,動脈硬化症の独立した危険因子であり,脳心血管疾患の発症予防および進展抑制のために適切な治療介入が必要である.

・高TG血症と低HDL-C血症は,過食や肥満,運動不足や飲酒などの食生活習慣との関連が強く,栄養指導や運動指導,節酒や禁煙といった生活全般への介入が必須である.

・LDL-CとTGがいずれも高値の場合,スタチンによるLDL-C管理を優先し,次に残余リスクとしてのnon-HDL-CおよびTG管理を行う.

・著明な高TG血症(≧500~1,000mg/dL)ではカイロミクロン(CM)の増加を疑い,急性膵炎のリスクが高まることに注意する.CMは膵臓の微小循環障害(虚血),TG水解産物(遊離脂肪酸)による膵腺房細胞傷害を介し,膵の炎症を惹起すると考えられている.

・低HDL-C血症に対する直接的な治療薬はなく,生活習慣の見直しや高TG血症治療薬による改善効果が期待される.

・続発性脂質異常症が疑われる場合,原疾患(内分泌疾患・糖尿病・自己免疫疾患・薬剤性など)の治療を優先する.

◆病態と診断

A病態

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