治療のポイント
・軽症の亜急性甲状腺炎にはNSAIDsを使用,重症の場合は副腎皮質ステロイドを使用する.
・急性化膿性甲状腺炎は,抗菌薬で治療後に根治的手術を行う.
Ⅰ.亜急性甲状腺炎
頻度 ときどきみる
GL亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン
◆病態と診断
A病態
・上気道感染がしばしば先行し,ウイルス感染が原因と考えられる.
・炎症によって甲状腺濾胞が破壊され,甲状腺ホルモンが漏出し甲状腺中毒症を発症する.甲状腺中毒症は,自然経過によって,甲状腺中毒症⇒機能正常化⇒機能低下⇒機能正常と数か月をかけて改善することが多い.
B診断
・日本甲状腺学会の「亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン」では,①有痛性甲状腺腫,②CRPまたは赤沈高値,③遊離T4 高値・TSH低値,④甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域,を認めれば亜急性甲状腺炎と診断される.
・高熱を伴うこともある.
・甲状腺の疼痛はしばしば反対側に移動する.
・急性期には,放射性ヨード(またはテクネチウム)甲状腺摂取率の低下を認める.
◆治療方針
疼痛が軽度の症例にはNSAIDsを使用する.疼痛が強い症例には副腎皮質ステロイドを投与する.ステロイドの減量が早いと再燃するので注意を要する.甲状腺中毒症による動悸が強い症例では,気管支喘息の合併などがないことを確認のうえ,β遮断薬を使用する.抗甲状腺薬は使用しない.
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)ロキソプロフェン(ロキソニン薬)錠(60mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
2)プレドニゾロン(プレドニン薬)錠(5mg) 1回1錠 1日3回 毎食後(症状が消失したら再燃に注意しながら2週に5mgずつ漸減し,約6週間後に中止)
Ⅱ.急性(化膿性)甲状腺炎
頻度 あまりみない
◆病態と診断
A病態
・多くは,先天性下咽頭梨状窩瘻からの感染による甲状腺またはその周囲の炎症である.
・小児期に多いが成