診療支援
治療

下垂体前葉機能低下症
hypopituitarism
蔭山和則
(弘前大学医学部附属病院診療教授・内分泌内科)

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◆病態と診断

A病態

・下垂体前葉ホルモンには,成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL),ゴナドトロピン(LH/FSH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)がある.これら下垂体ホルモンの分泌量が減少もしくは消失した状態を,下垂体前葉機能低下症という.

・原因となる病変が下垂体自体に存在する場合は原発性下垂体機能低下症,病変が視床下部にあり2次性に機能障害をきたしている場合は視床下部性下垂体機能低下症と分類する.

・症状は,障害されるホルモンの種類によってさまざまである.いずれも非特異的な症状が多く,しかも,一般に緩徐に発症して慢性の経過をとることが多いために診断されにくい.

B診断

・症状から下垂体ホルモンの欠落症状を疑った場合は,診断を進める.ホルモン基礎値の低下を確認したら(実際は,正常下限の値も多い),それぞれのホルモンに対する分泌刺激試験を行う.

・原因を調べるためにMRIなどによる画像検査を行い,視床下部-下垂体周辺の病変を検索する.

◆治療方針

 基礎疾患の治療とともに,分泌不全,欠乏となっているホルモンについてホルモン補充療法を行う.分泌不全となっている下垂体ホルモンを補充する場合と,その標的器官であるホルモンを補充する場合がある.

 下垂体ホルモンのうち,生命の維持に必要不可欠なものは,TSH,ACTHであり,それぞれ末梢のホルモンであるレボチロキシン(T4)製剤とヒドロコルチゾン製剤の補充を必要とする.両者のホルモン補充は,中断することなく生涯継続が必要であることを指導する.また,両者の欠乏がある場合,ヒドロコルチゾン製剤の補充をしてからT4 製剤を投与しないと,副腎クリーゼを生じる危険性があるので注意を要する.

A副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌不全

 ヒドロコルチゾン製剤などのグルココルチコイドを経口投与する.少量から開始

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