診療支援
治療

脊髄血管障害
vascular disorders of the spinal cord
安藤哲朗
(亀田総合病院・脳神経内科部長(千葉))

頻度 あまりみない

治療のポイント

・急性の脊髄障害は緊急のMRI検査が必要.

・脊髄の圧迫病態がある場合は,緊急除圧術を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・動脈性脊髄梗塞は,大動脈や椎骨動脈の解離により発症することがある.前脊髄動脈症候群は,背部痛を伴って四肢麻痺もしくは対麻痺が突然発症,早期からの膀胱直腸障害,解離性感覚障害が特徴.後脊髄動脈症候群は深部感覚障害を呈する.

・脊髄硬膜動静脈瘻は,静脈うっ滞による脊髄障害が亜急性から慢性に進行する.

・脊髄出血は髄内出血と髄外出血(くも膜下出血,硬膜下出血,硬膜外出血)に分類される.病因は血管奇形,腫瘍,血液疾患,抗凝固療法,外傷,特発性などがある.

B診断

・急性発症の脊髄症では,緊急のMRIにより,まず圧迫性の脊髄障害と脊髄出血を鑑別する.拡散強調画像とT2 強調画像も撮影する.

・動脈性脊髄梗塞は,発症から症候完成(あるいは高度障害)まで通常12時間以内.MRIにて,髄内にT2強調画像や拡散強調画像高信号/ADC map低信号を呈することがある.脊髄炎との鑑別のために脳脊髄液検査や各種自己抗体の測定をする.

・脊髄硬膜動静脈瘻は,下部胸髄から脊髄下端部にかけて長い脊髄の腫大とT2高信号を呈することが多い.くも膜下腔のflow void,ガドリニウム造影による異常血管が診断に重要.疑う場合は脊髄血管の評価が必要.

・頸椎部の硬膜外出血は片麻痺を呈することが多く,脳卒中との鑑別が問題となることがある.

◆治療方針

A外科的治療

 硬膜外出血,硬膜下出血で症状が急速に進行する例にはすみやかに減圧術を行う.髄内出血を示す腫瘍・血管奇形には,摘出術あるいは血管内手術を考慮する.

 硬膜動静脈瘻では,血管内塞栓術,あるいは直達手術により瘻孔を閉鎖する.

B内科的治療

 脊髄梗塞にはエビデンスのある特異的な治療法はない.脊髄炎が否定できない場合にはステロイドパルス療

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