GL脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018
治療のポイント
・運動失調症状,随伴症状,家族歴の有無などから適切に病型診断する.
・症状に応じた投薬治療,集中的なリハビリテーション,ケアを試みる.
・治療可能な二次性運動失調症の鑑別に留意する.
◆病態と診断
A病態
・脊髄小脳変性症(SCD)とは,小脳を中心に,脳幹,脊髄,大脳を侵しうる神経変性疾患である.
・運動失調症状を主体とし,パーキンソニズム,錐体路障害,末梢神経障害,認知機能低下などの随伴症状を種々の程度で呈しうる.
・孤発性SCDが2/3,遺伝性SCD〔常染色体顕性遺伝(90%以上),常染色体潜性遺伝,X連鎖性遺伝,ミトコンドリア遺伝〕が1/3を占める.
・孤発性SCDでは多系統萎縮症が最多で,次いで特発性小脳失調症.
・多くは中年発症であるが,遺伝性SCDでは若年発症も認める.
B診断
・小脳性運動失調を認める場合,まず二次性運動失調症を除外する.
・二次性の原因として,自己免疫,血管障害,感染症,炎症,腫瘍(傍腫瘍症候群を含む),代謝,中毒,脱髄などが挙げられる.
・次に,運動失調の原因が小脳性,前庭性,後索・末梢神経障害性,大脳性のいずれであるのかを評価する(ここでは小脳性が原因である場合について述べる).
・さらに,運動失調のみであるのか,それ以外の症状も認めるのかを評価する.
・家族歴の有無を確認する.
・家族歴がなく,小脳性運動失調に加えて起立性低血圧,残尿,尿失禁など自律神経不全を認めた場合には多系統萎縮症を疑う.
・家族歴がなく,小脳性運動失調のみの場合には特発性小脳失調症を疑う.
・家族歴があり,随伴症状も認める場合,日本ではマシャド・ジョセフ病〔脊髄小脳失調症3型(SCA3:spinocerebellar ataxia type 3)〕の頻度が高い.
・家族歴があり小脳性運動失調のみを認める場合,SCA6もしくはSCA3