診療支援
治療

球脊髄性筋萎縮症(Kennedy病,Kennedy-Alter-Sung病)
spinal and bulbar muscular atrophy(SBMA)
狩野 修
(東邦大学教授・神経内科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・病態進行抑制治療薬としてリュープロレリンがある.

・全身の筋力低下の進行は比較的遅いが,症状に応じたリハビリテーションや誤嚥予防などの生活指導を行い,また耐糖能異常,脂質異常症などの合併に対しての治療を行う.心室細動の原因となりうるブルガダ型心電図を約10%に認め,注意を要する.

・ロボットスーツであるHAL(hybrid assistive limb)医療用下肢タイプが医療保険の適用になっている.

◆病態と診断

A病態

・X染色体長腕(Xq11-q12)上のアンドロゲン受容体遺伝子第1エクソン内にあるCAG繰り返し配列において,健常人では11~36であるのに対し,38以上となる.

・病理学的所見では,下位運動ニューロンである脊髄前角細胞や顔面神経核,舌下神経核の変性や脱落がみられる.

B診断

・20~50歳の男性患者に発症し,舌や四肢の筋力低下や筋萎縮が主症状である.ただし,筋力低下がみられる前に,手指の振戦筋クランプを認めることがある.

血清CK値の上昇やクレアチニン値の低下がみられる.筋疾患と間違われやすいが,筋力低下は下肢筋優位,近位筋優位であることが多い.

・腱反射は低下~消失しており,感覚障害は,振動覚障害が下肢遠位でみられやすい.

・アンドロゲン不全症状として,体毛の減少,睾丸萎縮,皮膚の女性化が認められる.

・確定診断や特定疾患への申請には,遺伝子診断(アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピートの異常伸長)が必要になる.

◆治療方針

 緩徐進行性で根治療法はないが,疾患進行抑制治療薬であるリュープロレリンが保険適用であるため,可能な限り早期に診断することが重要である.また遺伝子検査の際には,遺伝カウンセリングを活用するなど,倫理的配慮を十分に行う.

A薬物治療

1.運動機能低下抑制

Px処方例

 リュープロレリン(リュープリン)SR注 1回11.25

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