診療支援
治療

多巣性運動ニューロパチー
multifocal motor neuropathy(MMN)
古賀道明
(山口大学大学院准教授・臨床神経学)

頻度 あまりみない

GL慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013

治療のポイント

・初期治療・維持治療のどちらも免疫グロブリン大量静注(IVIg:intravenous immunoglobulin)療法が治療の中心である.

・治療効果がみられない場合には,まず診断を見直すべきである.

◆病態と診断

A病態

・感覚障害を伴わない,左右非対称性の上肢遠位部筋力低下と筋萎縮を主徴とする後天性の慢性末梢神経障害で,神経伝導検査で伝導ブロックなど局所性の脱髄所見を呈することが特徴である.

・筋力低下の分布は多発性単神経障害のパターンであることを原則とし,緩徐進行性の経過を示す.

・罹患筋の萎縮や線維束性収縮をしばしば伴う.

・維持療法を継続しても,神経障害は緩徐かつ進行性に増悪することが多い.

B診断

・神経伝導検査で伝導ブロックを証明することが診断に最も重要であるが,みられないことも多く,糖脂質抗体(IgM型GM1抗体が代表的だが偽陽性も多い)や脳脊髄液検査(蛋白細胞解離),画像検査(MRIや超音波検査で神経肥厚),IVIgへの治療反応性などを考慮して診断せざるを得ないことが多い.

・臨床像が筋萎縮性側索硬化症や頸椎症性筋萎縮症と類似するため,鑑別が重要である.

◆治療方針

 エビデンスがあり保険適用を有するIVIgで初期治療と維持治療を行う.初期治療で効果があれば維持療法に移行するが,初期治療で寛解に至る症例も存在することから,初期治療から半年程度を目途にいったん治療を中断し,維持治療の継続が必要か判断する.初期治療で効果がない場合には,まず診断を見直すべきである.それでも本症らしければ,下記「C難治例への治療」の実施を検討する(ただし有効性のエビデンスは乏しい).副腎皮質ステロイドは効果なく使用しない.

A初期治療

Px処方例

 ポリエチレングリコール処理人免疫グロ

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