頻度 あまりみない
GLミトコンドリア病診療マニュアル2023
治療のポイント
・脳卒中様発作や心筋症,糖尿病,難聴といった特徴的な臨床症候が知られているが,限られた臓器障害のみを呈することが多く,診断は容易ではない.
・根治療法はいまだ確立しておらず,各臓器障害に応じた対症療法と全身管理が必要である.
・各症候について定期的な検査と経過観察を行って,適切な時期に対症療法を考慮する.
◆病態と診断
A病態
・ミトコンドリア病(ミトコンドリア脳筋症)は,細胞内のミトコンドリアのエネルギー代謝系の障害により,中枢神経系や骨格筋,心筋などのエネルギーを大量に要する組織・臓器の症状を主体で呈する.
・脳や筋だけでなく,眼,肝臓,腎臓,膵臓,消化管など全身のあらゆる組織・臓器障害を生じる疾患である.
・新生児期~成人期に発症し,病状進行は病型や病因遺伝子によってさまざまである.病因遺伝子として,原発性のミトコンドリアDNA(mtDNA)変異と核DNA変異によるものに大別され,mtDNA変異では母系遺伝を呈する.
B診断
・原発性のmtDNA変異には,三大臨床病型であるMELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy with lactic acidosis and stroke),MERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers),CPEO(chronic progressive external ophthalmoplegia)がある.
・MELASは,ミトコンドリア病のなかで最も高頻度に認める臨床病型である.ミオパチー,脳卒中様発作,高乳酸血症を特徴とする疾患で,小児期発症が多いが,成人発症例もしばしば認める.MERRFの典型例はミオクローヌスを初発症状として,てんかん,小脳失調,筋力低下・筋萎縮,知