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ニュートピックス
・抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体脳炎など自己免疫性脳炎の鑑別が重要.
・COVID-19後遺症に抑うつなどがある.
治療のポイント
・常に身体疾患に起因するものを鑑別に挙げ,適切な検査を行う.
・意識障害,特にせん妄が多い.
・原因となる身体疾患の治療が優先されるが,対症的に向精神薬が必要となることも多い.
・向精神薬を投与する場合は,選択や用量に注意し副作用を軽減する.
◆病態と診断
A病態
1.疾患概念
・身体疾患に伴う精神症状は,精神症状が身体疾患の生理学的機序と関連する(狭義)(ICD-10:F00~09),身体疾患による心理社会的な影響(広義)からなる.
・おおむね共通した症状,経過を呈する.急性期は軽度意識障害による不穏,せん妄,幻覚妄想,回復期は不安,抑うつ,慢性期は脳障害による認知機能障害,人格変化がみられる.
2.器質性精神疾患
・頭部外傷,脳腫瘍,脳炎,脳血管障害,感染症(神経梅毒など)など,脳に直接原因があるものを含む.近年,神経自己抗体による精神症状(自己免疫性精神病),COVID-19後遺症の脳症(抑うつなど)がトピックスである.抗NMDA受容体抗体は頻度が最も高く,約半数に精神症状を伴い脳炎症状を欠く患者も多く,8割が精神科を初診する.原発性精神疾患との鑑別に最重要な疾患である.
3.症状性精神障害
a.内分泌疾患
・甲状腺機能亢進・低下症,副甲状腺機能亢進・低下症,副腎皮質機能亢進(クッシング症候群)・低下症,交感神経亢進症(褐色細胞腫など),インスリノーマ,妊娠関連の精神症状(周産期精神病)などを含む.
b.膠原病
・全身性エリテマトーデスによる精神症状(NPSLE:neuropsychiatric SLE)は頻度が高い.気分症状(うつ,躁)が多く,中枢神経への自己免疫的侵襲による脳炎や多発小梗塞が関連する.ベーチ