診療支援
治療

難治性うつ病(治療抵抗性うつ病)
refractory depression(treatment-resistant depression)
中川 伸
(山口大学大学院教授・高次脳機能病態学)

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GLうつ病治療ガイドライン(第2版)(2017)

治療のポイント

・診断や服薬アドヒアランス,生活環境を再確認する.

・併存症の影響を考える.

・薬物療法における付加療法を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・うつ病は治りやすい病気ととらえられがちであるが,第1選択の抗うつ薬で寛解に至る患者は30~40%でしかない.現在使用されている抗うつ薬の作用機序のほとんどは,モノアミンを上昇させ,神経成長因子などによる神経ネットワーク環境を改善することによるものと考えられており,その過程に関わるトランスポーターなどの個体差などが関与する可能性がある.

B診断

・作用機序の異なる2種類以上の抗うつ薬を十分量,十分期間用いたにもかかわらず,十分に改善しないうつ病を難治性うつ病という.

◆治療方針

A診断を再考する

 元気がない,気分がさえない,やる気が出ないなどの症状があるとうつ病にみえてしまう.高齢者の栄養障害,便秘,多剤処方による抑うつ状態などに注意が必要である.うつ病の診断基準はDSM-5のような操作的診断基準を用いるとわかりやすい.

 不安が併存すると難治性になりやすい.また,2年間以上軽度の抑うつ状態が持続する持続性抑うつ症(気分変調症)も難治性が多い.

 双極性うつ病(双極症における抑うつエピソード)はおおむね抗うつ薬が効かず,躁状態に移行する場合もあるので注意を要する.躁状態が過去に確認できない場合には,単極性うつ病(うつ病)との鑑別がきわめて困難になる.

B行ってきた薬物治療を再考する

 抗うつ薬はすぐには効果を示さず,効果判定には4~6週間は必要である.また,効果量以上でなければ効果が望めない場合が多く,難治性の場合には最大量を使用することになる.服薬アドヒアランスは低い場合が多く,確認が必要になる.副作用などにより最大量を使用できない場合にはその薬物に不耐性であり,難治ではない.このよう

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