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治療

パニック症と全般不安症
panic disorder and generalized anxiety disorder
井上 猛
(東京医科大学主任教授・精神医学)

Ⅰ.パニック症

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◆病態と診断

・パニック症とは,①突然の予期しないパニック発作が反復し,②発作がないときもまた発作が起こるのではないかと不安になり(予期不安),③そのためにパニック発作が起きそうな場所や状況を避ける(広場恐怖),不安症の1型である.

・青天の霹靂のようにパニック発作が起きることが多いが,過労や寝不足,二日酔いが背景にある場合もある.

・パニック発作とは,突然恐怖心とともに動悸,発汗,息苦しさ,吐き気,めまい感などが強く出現して10分以内にピークに達する発作である.

◆治療方針

A治療方針の概要

 鑑別診断が重要で,心疾患,呼吸器疾患,甲状腺機能亢進症,覚せい剤使用,てんかんなどの鑑別は必要である.まず心理教育により本人および家族がパニック症の症状や治療,治る病気であることを十分に正しく理解することが必要である.そのうえで薬物療法や精神療法を丁寧に行う.

B薬物療法

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬は速効性であり,治療初期に不安の強いときは常用あるいは頓用で使用可能であるが,漫然と長期に服用することは依存性や禁止事項(飲酒,自動車運転)があるため避けたほうがよい.最近は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用が海外のガイドラインで推奨されている.SSRIのパロキセチンとセルトラリンは国内で保険適用が認められている.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)パロキセチン(パキシル)錠(10mg) 1回1~3錠 1日1回 夕食後または就寝前(少量から開始)

2)セルトラリン(ジェイゾロフト)錠(25mg) 1回1~4錠 1日1回 夕食後または就寝前(少量から開始)

3)ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)錠(1mg) 1回1~2錠 1日1回 就寝前(保険審査上は使用を認められている)

4)ロラゼパム錠(0.5mg) 1回1~2錠 1日3回 毎食後(不安時の頓用使用

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