診療支援
治療

注意欠如多動症,限局性学習症(成人)
attention-deficit/hyperactivity disorder(ADHD),specific learning disorder(adult)
岡田 俊
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部長(東京))

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GL注意欠如・多動症―ADHD―の診断・治療ガイドライン第5版(2022)

ニュートピックス

・ADHD治療薬のうち3剤が成人期ADHDに対する適応をもち,これらの使用を含む本邦における治療ガイドラインが2022年に発刊された.

治療のポイント

・ADHD診断を受ける成人患者は増加している.

・心理教育や環境調整などの心理社会的治療を行い,必要に応じて薬物療法を併用する.

◆病態と診断

A病態

・ADHDでは,実行機能障害,報酬遅延の嫌悪,時間知覚の障害,デフォルトモードネットワークの障害が報告されている.

・限局性学習症は,読み書きや計算に求められる何らかの過程(視覚・形態認知,音韻への変換・処理,数概念の処理など)に機能障害がある.

B診断

・成人期ADHDのスクリーニングにはAdult ADHD Self-Report Scale症状チェックリストが,症状評価にはConners' Adult ADHD Rating Scalesなどが用いられる.診断には,現在だけではなく,12歳以前から不注意多動-衝動性があることを評価すること,他の精神症状がある場合には,精神症状の影響を加味し,適切な除外診断,併存診断を行う.

・限局性学習症の診断には,家庭学習や学校の学習場面で困難を抱えてきた経過に加え,言語聴覚士による音読,音韻認識,視覚認知などの評価を通じて検査がなされる.成人期にはスキル獲得や対処行動により,一見その困難が隠れていることが多いので,成人期の困難の気づきから児童期の問診へと広げる.

◆治療方針

 治療の目的は,良好な適応を保ち,生活の質を向上させることにある.そのためには自らの特性を理解したり,周囲の環境を調整したり,適切な対処スキルを身につけるといった心理社会的治療を行うことが重要である.加えて,成人期ADHDの場合には,必要に応じて薬物療法を併用する.限局性学習症の場

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