診療支援
治療

胸郭出口症候群
thoracic outlet syndrome(TOS)
國吉一樹
(せれの整形外科クリニック柏の葉・院長(千葉))

頻度 情報なし

◆病態と診断

・胸郭出口症候群(TOS)は胸郭出口部における腕神経叢の絞扼性神経障害.潜在的な患者数はかなりの数に上ると推測される.20~30歳代に多く,女性が男性の3.5~4倍多い.若いなで肩の女性に発生しやすい.

A症状

・上肢の痛み・しびれ・冷感,肩凝り,項頸背部痛,前胸部痛,自律神経症状として悪心・嘔吐,めまい,全身倦怠など多岐にわたる.上肢における症状出現部位も多彩.安静時痛に加え,上肢挙上位での症状増悪が特徴的.

B病態

・胸郭出口部,①斜角筋三角部,②肋鎖間隙,③小胸筋下間隙における腕神経叢や鎖骨下動静脈の圧迫もしくは牽引により発生.これらの間隙では生理的に神経血管束の圧迫が静的もしくは動的に生じやすい.さらに頸肋や第1肋骨奇形などの骨性因子,異常索状物や斜角筋の線維化などの軟部組織因子による形態異常も加わり発症する.

C診断

・理学所見として,Morleyテスト(斜角筋三角部を圧迫して圧痛,放散痛の有無をみる),Wrightテスト(両肩を外転・外旋して橈骨動脈の拍動の減弱・消失の有無および疼痛再現性をみる),Roosテスト(両肩外転・外旋位,両肘屈曲位で手指の屈曲伸展運動を3分間行い,脱力・疼痛により継続不能となれば陽性)を確認する.Morley,Roosテストでは感度・特異度は比較的高いとされる.

◆治療方針

 保存療法としては,生活指導(不良肢位の改善と不安除去),運動療法(斜角筋スパスムの除去と肩甲帯挙上筋の強化),薬物療法(NSAIDs,トラマドール・アセトアミノフェン,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液,プレガバリン,ミロガバリンなど),斜角筋間ブロックなどを3~6か月間行う.一定期間の保存療法が奏効しない場合に手術療法を考慮.斜角筋切除術,第1肋骨切除術,小胸筋切離術,頸肋および索状物の切除術などを症例に応じて組み合わせて行う.術式により鎖骨上

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