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治療

腰部脊柱管狭窄症
lumbar spinal stenosis
唐司寿一
(労働者健康安全機構関東労災病院・整形外科脊椎外科部長(神奈川))

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GL腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021改訂第2版

治療のポイント

・両下肢しびれが主体の馬尾症は,内服薬や仙骨裂孔ブロック注射で改善不十分な場合には手術治療を考慮する.

・片側の強い下肢痛を呈する神経根症は,内服薬や神経根ブロック注射などの保存治療で軽快することも多い.

・下肢筋力低下,排尿排便障害,会陰部しびれを呈する場合は早期の手術を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・腰椎レベルの脊柱管に囲まれた硬膜管が,肥厚した黄色靭帯により圧迫された状態である.

・硬膜管中心部が圧迫されて生じる馬尾症と,椎間孔内や椎間孔外側で神経根が圧迫されて生じる神経根症があり,後者は画像診断に苦慮する場合がある.

B診断

・下肢の痛み・しびれが立位歩行で増悪し,座ると軽快する(間欠性跛行)のが特徴的である.連続歩行可能時間・距離が症状の重症度を反映する.

・腰痛を合併することもあるが,下肢痛がない腰痛のみの場合は腰部脊柱管狭窄症とは考えない.

・間欠性跛行を呈する末梢動脈閉塞性疾患との鑑別が重要で,必ず足背動脈の拍動触知を確認する.鑑別目的に足関節上腕血圧比(ABI:ankle brachial index)測定を行うこともある.

腰椎単純MRIで硬膜管や神経根の圧迫所見を確認する.無症候性の圧迫所見がしばしばあるため,神経学的高位診断と一致するかどうかの検討が重要である.神経根ブロック注射による責任高位診断が必要となることもある.

◆治療方針

 症状の程度や各治療に対する効果を評価し,内服,ブロック注射,手術の順の3段階で治療方針を検討する.必ずしもMRI上の狭窄の程度と相関するわけではない.

A保存治療

1.馬尾症

 両下肢や会陰部の広範囲のしびれを呈するが高度な痛みではないことが多く,下記処方のうちプレガバリンまたはミロガバリンのみとすることが多い.効果不十分な場合は仙骨裂孔ブロック注射を行う.改善不

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