頻度 ときどきみる(全国がん登録罹患データでは,2019年人口10万対年間20.7例罹患)
GL卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版
GL遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2021年版
ニュートピックス
・WHO分類 第5版に準じて改訂された「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編 第2版」において,高異型度漿液性癌の原発巣の決定基準が記載された.これまで卵巣癌と診断されていた症例が卵管癌と診断される割合が増加すると予想される.
・Ⅱ~Ⅳ期の卵巣癌・卵管癌・原発性腹膜癌において,パクリタキセル毎週静脈内投与とカルボプラチンの3週ごとの腹腔内投与群は,パクリタキセル毎週静脈内投与とカルボプラチンの3週ごとの静脈内投与群よりも,無増悪生存期間を有意に延長することが明らかとなった.
治療のポイント
・卵巣癌,卵管癌,原発性腹膜癌の治療は,手術療法と化学療法が基本である.特に手術療法は,組織型と進行期の確定診断に重要である.
・化学療法の基本は,タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法である.また,VEGFR阻害薬やPARP阻害薬の登場により,Ⅲ・Ⅳ期症例に対する維持療法の重要性が高まっている.
◆病態と診断
A病態
・卵巣癌,腹膜癌,卵管癌は,ミューラー管由来腺癌という同じ範疇の疾患として取り扱われることが多い.
・卵巣癌の主要な組織型は,漿液性癌(40%),明細胞癌(24%),類内膜癌(17%),粘液性癌(10%)である.漿液性癌は,高異型度と低異型度に分類される.
・卵巣癌は発癌メカニズムからType ⅠとType Ⅱに分類される.Type Ⅰは良性から境界悪性,悪性へと多段階発癌を呈するもので,低異型度漿液性癌,低異型度類内膜癌,明細胞癌,粘液性癌が含まれる.進行が緩徐で,Ⅰ期で発見されることが多い.Type Ⅱは高異型度漿液性癌,高異型度類内膜癌が該当し,進行が早く,Ⅲ/