診療支援
治療

前置胎盤・低置胎盤
placenta previa,low-lying placenta
関沢明彦
(昭和大学主任教授・産婦人科学)

頻度 よくみる(0.3~0.5%の妊娠に合併する)

GL産婦人科診療ガイドライン 産科編2023

治療のポイント

・前置胎盤・低置胎盤の診断は妊娠31週末までに行う.

・早産児の管理,夜間・休日での緊急手術,迅速な輸血対応を含む産科危機的出血に対する全身管理が可能な医療施設での周産期管理が望ましい.

◆病態と診断

・前置胎盤とは,胎盤が内子宮口の全部または一部を覆う状態をいう.

・超音波検査で組織学的内子宮口とそれを覆っている胎盤の辺縁までの距離が2cm以上の場合を全前置胎盤,2cm未満の場合を部分前置胎盤,ほぼ0の場合を辺縁前置胎盤という.低置胎盤とは,胎盤が内子宮口に接していないものの胎盤辺縁までの距離が2cm以内の場合をいう.

・前置胎盤のリスク因子としては,子宮手術(帝王切開術・子宮内容除去術・子宮筋腫核出術など)の既往,多胎妊娠,高年齢妊娠,喫煙などがある.

・妊娠経過に伴って子宮下節が進展することで,胎盤は内子宮口から離れていく.妊娠15~19週,20~23週,24~27週,28~31週,32~35週で前置胎盤を認めた症例のなかで分娩時に前置胎盤である頻度はそれぞれ12%,34%,49%,62%,73%と報告されている.

・前置胎盤では癒着胎盤が5~10%に合併するため,手術前に超音波検査などで癒着胎盤の可能性について評価することが望まれるが,術前評価の精度は高くないため癒着胎盤も想定した準備が必要である.

・子宮下節は子宮体部に比して分娩後の子宮収縮力が弱いため胎盤剥離面からの出血が制御できずに大量出血をきたし,DICを併発して産科危機的出血となることがある.加えて,癒着胎盤を合併する場合には出血量はさらに大量になる.

・前置胎盤では,妊娠第2三半期以降に下腹部痛を伴わない性器出血(警告出血)を認めることがある.妊娠第3三半期以降に性器出血の頻度が増加し,出血の増量で早い時期での帝王

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