治療のポイント
・子宮破裂の対応を含めた緊急帝王切開が可能な施設で実施する.
・TOLACを行う条件を満たしている.
・本人が子宮破裂のリスクを承知したうえで経腟分娩を希望し,文書による説明と同意を得ている.
◆病態と診断
・既往帝王切開後妊婦が経腟分娩を目指すことをTOLAC(trial of labor after cesarean section)といい,経腟分娩が成功した場合をVBAC(vaginal birth after cesarean section)という.本邦においては現在,約75%の施設がTOLACを実施しておらず,実際TOLACが行われているのは既往帝王切開後妊婦の約5%である.
・帝王切開後妊娠では子宮破裂のリスクがあり,TOLAC試行中の子宮破裂率は0.2~0.7%であるため,陣痛開始前に予定帝王切開が選択されることが多い.
・TOLACでは反復帝王切開に比べ,母体合併症を減少させるが児の合併症は増加する.
・TOLAC施行中に,母児に危険な状態が推測されてから高次救急病院に母体搬送することは難しいため,これらに対応できない施設ではTOLACは行わず,反復帝王切開を行ったほうがよい.
◆治療方針
TOLACを行う場合には,以下の項目を満たしていることを確認する.
①緊急帝王切開および子宮破裂に対する緊急手術が可能である.
②既往帝王切開数が1回である.
③既往帝王切開術式が子宮下節横切開であり,経過が良好であった.
④既往帝王切開以外の子宮腔内に達する手術歴がない.
⑤児頭骨盤不均衡がない.
TOLAC試行中は連続的に分娩監視装置を装着し,陣痛誘発・促進が必要な場合はオキシトシンを使用し,プロスタグランジンは使用しない.
子宮破裂を事前に予測することは難しい.陣痛開始後の子宮破裂徴候として,胎児心拍数異常や下腹部痛,異常出血が挙げられる.分娩経過も大切であり,分娩