診療支援
治療

小児の急性細気管支炎
acute bronchiolitis in children
笠井正志
(兵庫県立こども病院・感染症内科部長)

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GL小児RSウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン2021

GL小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022

ニュートピックス

・2023年2月に,小児の急性細気管支炎の主要な病原体である呼吸器合胞体ウイルス(RSV:respiratory syncytial virus)ワクチンの国内製造販売承認申請がなされた.これは妊婦に接種するワクチンで,胎児に中和抗体を移行させ,出生時からRSV感染を予防することが期待される.

治療のポイント

・自然治癒する疾患であり,支持療法が治療の主体である.

・ほとんどの児は自宅で管理できるが,一部で重症化する.また低出生体重児,心肺系に基礎疾患を有する者,免疫不全者では重症化のリスクが高い.重症度評価は急性細気管支炎診療においてきわめて重要である.

◆病態と診断

・急性細気管支炎は,ウイルス感染症に伴う下気道の炎症(気道の浮腫,分泌物増加,気道上皮細胞の壊死・脱落)による下気道閉塞を主たる病態とする.

・急性細気管支炎の臨床症状は,喘鳴,咳,発熱,無呼吸である.気道閉塞は,体位や咳などにより急速に変化するため,短期間で呼吸状態が変動することがある.そのため特に低年齢児の重症度を病初期に判断することは難しい.

・急性細気管支炎の主たる原因微生物は,RSV,ライノウイルス,ヒトメタニューモウイルス,パラインフルエンザウイルスである.RSVは最も高頻度で,ほかのウイルスに比べて重症化しやすい.細菌が重症化に主要な役割を果たすという証拠はみつかっていないが,クラミジア・トラコマティスおよび肺炎マイコプラズマは,患者背景や疫学状況によっては鑑別診断として考慮される.

・細気管支炎の診断は,病歴と身体所見に基づいて行われる.RSVの検査診断として,国内ではイムノクロマト法によるRSV抗原定性検査が広く用いられている.RSV抗原定性検査の保険適用は,入院患者,1歳未満

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