診療支援
治療

乳児難治性下痢症
intractable diarrhea in infancy
清水俊明
(順天堂大学大学院教授・小児科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・難治性下痢症にもプロバイオティクスの投与が試みられているが,その有効性は限定的である.

治療のポイント

・脱水症に対する治療として,経口補水液あるいは経静脈輸液を行う.

・下痢に対する治療として,止瀉薬や整腸薬,乳糖分解酵素薬の投与を行う.

・原因に対する治療を並行して行っていく.

◆病態と診断

A病態

・“原因にかかわらず2週間以上続く下痢”を広義の本症として“難治性下痢”とよぶことが多い.

・難治性下痢の原因はさまざまであり,頻度の高いものとして,感染性胃腸症の遷延(腸炎後症候群),2次性乳糖不耐性,食物アレルギーなどが挙げられる.

・頻度は低いが,注意を要する疾患として,乳児炎症性腸疾患,好酸球性胃腸炎,蛋白漏出性胃腸症,膵外分泌機能低下,神経芽細胞腫,VIP(vasoactive intestinal polypeptide)産生腫瘍,免疫不全関連腸炎,代理ミュンヒハウゼン症候群などが挙げられる.

B診断

・下痢の程度(性状および回数),血便の有無,発熱や脱水などの全身症状,および臨床経過から,便検査や血液検査を選択し,必要であれば腸管粘膜の観察や組織検査を行って下痢の原因を明らかにする.

便検査としては,便培養検査,脂肪,還元糖,潜血,好酸球などの同定,水様性の場合は電解質濃度の測定などを行う.

・血液検査では,一般検査に加え,適宜アレルギー検査,膵酵素値やVIP値の測定,免疫能検査などを行う.

◆治療方針

 下痢の程度と全身状態を評価し,それらに対する対症療法を行うと同時に,下痢の原因を検索し,原因に対する治療を行っていく.

A対症療法

1.脱水症に対する治療

 経口補液をまず考えるが,下痢の程度が強い場合や脱水症状が高度の場合は,経静脈輸液を行う.電解質異常を伴う場合もあり,その補正も考慮しながら輸液を行う.

2.下痢に対する治療

 止瀉薬や整腸薬による下痢の対

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