診療支援
治療

小児の鉄欠乏性貧血
iron-deficiency anemia in children
平山雅浩
(三重大学大学院教授・小児科学)

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治療のポイント

・治療は食事指導と鉄剤投与である.

・鉄剤投与後に末梢血検査にて貧血が改善したあともすぐには鉄剤投与を中止せず,貯蔵鉄(フェリチン値)の回復を確認後に中止する.

・鉄剤投与中止後に再燃する場合は,メッケル憩室からの慢性消化管出血などを考慮すべきである.

・鉄剤を投与しても改善しない場合,サラセミアや異常ヘモグロビン症に加え,慢性炎症を鑑別するとともに,内服のアドヒアランスを確認する.

◆病態と診断

A病態

・鉄需要が増える成長期に,鉄を十分に摂取しないと発症する.

・早産児は正期産児に比べエリスロポエチン産生能も低く,貯蔵鉄も少ないため鉄欠乏性貧血となりやすい.

・正期産児であっても,母乳栄養児で離乳食摂取が進まない場合,鉄欠乏性貧血となる.

・牛乳は鉄の含有量が0.1~0.2mg/dLと少なく,Caを大量に摂り続けることによって,消化管からの鉄吸収が阻害されるため,幼児・学童期に牛乳を過剰に摂取すると,鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を発症する.

B診断

・年長児では顔色不良(蒼白),倦怠感,易疲労性などがみられやすいが,乳幼児では不機嫌,活気の低下といった非特異的な症状のことが多く,無症状の場合も多い.

・生後6か月以後の小児で,末梢血検査にてHb値が11g/dL未満であれば,貧血と診断される.鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血となるため,MCV,MCH,MCHCはいずれも低値となる.

・上記に加え,血清フェリチン値が5歳未満で12ng/mL未満,5歳以上で15ng/mL未満であれば,鉄欠乏性貧血と診断される.

◆治療方針

 治療は鉄含有食品の摂取,牛乳多飲の回避といった食事指導と,鉄剤を3mg/kg/日で経口投与する.内服後に黒色便となることを伝える.

Px処方例 下記のいずれかを投与する.

1)溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミン)シロップ(6mg/mL鉄含有) 1回0.25mL

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