診療支援
治療

睡眠時驚愕症(夜驚症)
sleep terrors,disorders of arousal from NREM sleep
三島和夫
(秋田大学大学院教授・精神科学)

頻度 ときどきみる

治療のポイント

・成長とともに自然消失するケースが大部分であることを説明し,家族を安心させる.

・規則的な生活リズム,不安やストレスの緩和などの睡眠衛生指導を行う.

・症状が出現している間は安全を確保しながら見守るように指導する.

◆病態と診断

A病態

・睡眠時驚愕症(夜驚症)は,深いノンレム睡眠(徐波睡眠)からの不完全な覚醒によって生じる覚醒障害群(睡眠時随伴症の一種)に属する.同じ覚醒障害群に錯乱性覚醒(臥床中に生じる精神的混乱や混乱した行動)と睡眠時遊行症(夢遊病;寝床以外での歩行や混乱した行動)があり,病態の一部を共有している.

・徐波睡眠中に,大声で突然泣き出す,つんざくような叫び声をあげるなど,著しい恐怖の表出がみられる.頻脈,頻呼吸,発汗,散瞳,皮膚の紅潮など,交感神経緊張の徴候を伴う.

・徐波睡眠の多い睡眠前半(主に入眠から3時間以内)で起こりやすく,通常持続は数分~十数分で終了する.

・声かけや揺さぶりなどの刺激には反応せず,覚醒後はエピソードを記憶していない.

・通常,4~12歳で発症し,発症のピークは就学前~小学校低学年である.頻度はほぼ毎日~数か月に一度までまちまちである.小児での有病率は1~6.5%であり,青年期のはじめまでに自然に消失することが多いが,成人でも2%で認められる.神経発達症ではより高率に出現する.

・睡眠不足や発熱は徐波睡眠が増加するため強い誘因となる.睡眠時呼吸障害による低酸素刺激,睡眠中のSNSの通知音や環境音,周期性四肢運動障害やレストレスレッグス症候群などの睡眠障害も,徐波睡眠中の覚醒刺激となり,本症を誘発する.

B診断

・睡眠日誌が有用である.就床・起床時刻,睡眠時間など睡眠習慣を少なくとも2週間以上記録することで,睡眠不足や睡眠リズムの乱れ,その他の睡眠問題を知ることができる.本症エピソードが生じた時間帯のほか,就寝時のメディア

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