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治療

チック症/トゥレット症(チック障害/トゥレット障害)
tic disorder/Tourette's disorder
山下裕史朗
(久留米大学主任教授・小児科学)

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GL小児チック症診療ガイドライン(2023年末に出版予定)

治療のポイント

・生物学的基盤のある疾患であり,親の育て方や本人の性格によるものではないことへの理解と受容を本人および家族,教師などに求める.

・強迫症状や注意欠如多動症などを併存することがあり,包括的評価を行って治療方針を立てる.

・チックに対する有効性のエビデンスが十分にある薬物は抗精神病薬である(適応外使用).

◆病態と診断

A病態

・チック症の病態は未解明であるが,精神薬理学的には抗ドパミン作用薬が有効であることや中枢神経刺激薬で症状増悪があることから,線条体におけるドパミン過剰状態が病態にかかわっていると考えられている.

・ドパミン系だけでなく,セロトニン系,ノルアドレナリン系の関与や皮質-線条体-視床-皮質回路の異常が示唆されている.

・遺伝の影響がある程度強いと考えられ,複数の遺伝子と環境要因が相互的に働きトゥレット症になると考えられている.

B診断

・チックは,突発的,急速,反復性,非律動性の運動あるいは発声である.運動チック音声チックがあり,両者とも典型的な単純性チックと,持続時間がやや長く,意味があるようにみえる複雑性チックに分けられる.

トゥレット症は,18歳以前の発症で多彩な運動チックおよび1つまたはそれ以上の音声チックをもち,最初にチックが始まってから1年以上持続する場合に診断される.

・トゥレット症は,運動チックと音声チックの両方を有するが,どちらか片方であれば,持続性(慢性)運動および/または音声チック症となる.チックの種類にかかわらず,持続期間が1年未満であれば,暫定的チック症となる.

◆治療方針

 チック症の治療目標は,チックとうまく付き合いながら,自分らしく生き生きと生活することを支えることである.

 暫定的チック症では,自然軽快することが多いことを説明し,患児はもちろんのこと家族を含めて症状

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