診療支援
治療

扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍
peritonsillitis and peritonsillar abscess
高原 幹
(旭川医科大学講師・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

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治療のポイント

・重症化すると生命にかかわる感染症であり,迅速かつ適切な治療が求められる.

・上気道の評価や切開排膿など,専門医(耳鼻咽喉科)へのコンサルトが必要となる.

◆病態と診断

A病態

・急性扁桃炎が重症化し,口蓋扁桃被膜を越え炎症が周囲組織(扁桃周囲間隙)に波及する説と,扁桃周囲間隙にあるWeber腺が感染するという説とがある.

・蜂窩織炎の場合は周囲炎,膿瘍を形成した場合は周囲膿瘍となる.

・膿瘍の形成部位は被膜と周囲組織の結合が疎な上極型が多いが,下極型もみられ頸部に膿瘍が進展しやすい.進展すると深頸部膿瘍など生命にかかわる重篤な病態を併発するため,適切な治療が求められる.

B診断

・症状として,咽頭痛,発熱,嚥下困難を認め,重症の場合は含み声開口障害が出現する.喘鳴がある場合は上気道閉塞を疑い,耳鼻咽喉科にすみやかに連絡する.

・所見として,口蓋扁桃のみならず前口蓋弓や口蓋垂の発赤,腫脹,膨隆が認められる.軟口蓋腫脹と口蓋垂の偏位が顕著であれば上極型扁桃周囲膿瘍を疑う.扁桃下極から連続する咽頭側壁の腫脹があれば下極型を疑うが,続発する上気道狭窄を含め口腔内視診のみではその評価は難しい.

・確定診断は造影CTであり,膿瘍であれば辺縁造影効果を伴った液体貯留が認められる.その位置により上極型,下極型,深頸部膿瘍などの診断が可能となる.

◆治療方針

 入院加療が原則であるが,扁桃周囲炎で摂食状態が安定し,上気道に異常がないものは外来でも治療可能と考え,患者の社会的事情も考慮し決定する.

 扁桃周囲炎では抗菌薬の投与,周囲膿瘍では追加して排膿処置が必要である.ただし,膿瘍が小さい場合や,処置しにくい下極型の場合,抗菌薬投与にて経過をみる場合も多い.また,下極型において即時扁桃摘出術を行う耳鼻咽喉科施設もある.

 切開排膿処置はCTにて膿瘍が形成されている部位を推定し,その直上

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