診療支援
治療

唾液腺腫脹
swelling of salivary glands
東野正明
(大阪医科薬科大学講師・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

頻度 ときどきみる(炎症)

頻度 あまりみない(腫瘍)

治療のポイント

・まず炎症か腫瘍かを見極める.診断には超音波検査,CT,MRIが有用である.

・炎症の場合は,CRPや白血球上昇とともに血中アミラーゼが上昇する.

・唾石症は,食事の際に腫れて痛むことが特徴的であり,顎下腺管に多く,口腔底と顎下部を挟み込むように双手診で触ると石を触知しやすい.

・口渇を伴う唾液腺炎ではシェーグレン症候群の合併に注意する.

・若年者では流行性耳下腺炎(ムンプス)の罹患歴を確認する.ムンプスは3~5年周期で流行する.

・腫瘍で悪性を疑う所見は,顔面神経麻痺,痛み,可動制限である.

◆病態と診断

A病態

・いずれの唾液腺炎でも,耳下腺や顎下腺などの唾液腺が腫脹し,痛みや発熱を生じる.細菌性炎症は,唾石症や唾液腺管狭窄症,線維素性唾液管炎,唾液分泌能の低下に伴う口腔から唾液腺管経由の逆行性感染などが主な原因である.ムンプスは接触,飛沫感染で伝搬する.IgG4関連疾患はリンパ球とIgG4陽性形質細胞の浸潤により線維化を生じる.木村病は全身の軟部組織,特に頭頸部に好発する好酸球浸潤を伴う炎症性肉芽腫である.10歳以下の小児では原因不明の反復性耳下腺炎がみられることがある.

・唾石症は,顎下腺に生じやすいが,まれに耳下腺にも生じる.顎下腺導管であるワルトン管や耳下腺導管であるステノン管に石を生じ,閉塞,炎症をきたすことで食事の際の唾液分泌時に痛みを伴う顎下腺腫脹を生じる.

・唾液腺腫瘍は唾液腺に生じる腫瘍で,悪性では頸部リンパ節転移を生じることがある.

B診断

・唾液腺炎では血液検査でCRPや好中球に加えて,血清アミラーゼが上昇する.唾液腺マッサージにて,ワルトン管もしくはステノン管開口部から膿汁の流出が観察できる.ムンプスは罹患歴が重要で,既感染か初感染かはムンプスIgG抗体,IgM抗体で診断する.一側性高度難聴,髄膜炎,睾丸

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