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8 甲状腺機能スクリーニング

甲状腺機能異常症の頻度

甲状腺機能異常症は特に女性で高頻度に認められる疾患である.

特にうつ症状で発症する甲状腺機能低下症や,心房細動患者における甲状腺機能亢進症はよく経験される.

Basedow病も橋本病も女性に5-10倍多く,20-60歳が好発年齢である.

日本人成人での健康診断において,顕性甲状腺機能低下症は0.7%,潜在性甲状腺機能低下症は5.8%,顕性甲状腺機能亢進症は0.7%,潜在性甲状腺機能亢進症は2.1%で認められる〔Thyroid. 2009 Sep; 19(9): 937-44〕.

入院患者と甲状腺機能

▶急性期疾患罹患時にTSHが変動することはよくあることで,入院患者では採血すれば甲状腺機能異常は9.3-17.2%で見られるが,85-92%は再検すると正常化し,実際の甲状腺機能異常の頻度は1-2%程度と推測されている〔Arch Intern Med. 1999 Apr 12; 159(7): 658-65〕.

甲状腺機能異常症の病歴・身体所見

自己免疫的甲状腺疾患のおおよそ半数で主に女系の甲状腺疾患家族歴を認める.

甲状腺機能異常症を鑑別にあげた場合は,活動性・食欲・体重変化・便通・月経・熱耐性・心拍数・皮膚・毛髪をチェックし甲状腺機能低下症か甲状腺機能亢進症に矛盾しなければ採血して甲状腺機能の確認をする.

甲状腺機能亢進症に起こりうる症候と甲状腺機能低下症に起こりうる症候の両者を認める場合,甲状腺機能は正常であることが多い.

▶易疲労感,浮腫,瘙痒感はいずれでも生じうる.

▶甲状腺機能低下症で血圧は高く,甲状腺機能亢進症で血圧はむしろ低くなることが多いこと,また甲状腺機能低下症で月経過多になることは間違えないように覚えること.

▶暑がりや寒がり,便秘,月経などは以前との変化が重要である.

びまん性甲状腺腫

びまん性甲状腺腫は若年女性でよく見られるが,甲状腺機

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