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治療

新生児の生理的皮膚変化
Neonatal skin conditions
定平 知江子
(東京都立小児総合医療センター医長)

【新生児の生理的皮膚変化とは】ほかの年齢にはない新生児特有の皮膚構造や,機能の未熟性によってみられる皮膚変化のことである.代表的な生理的皮膚変化を以下に挙げる.

①胎脂:皮脂腺からの分泌物と剝脱した胎児皮膚の上皮細胞との混合物である.その作用はさまざまで,(1)胎児が産道を通る際の抵抗を減弱させる,(2)胎児小腸に移行し消化管の保護や消化管機能の成熟,促進を促す,(3)胎児・新生児の抗菌作用を担い生後数日の感染を防ぐ,などが知られている.②生理的落屑:出生後の急激な温度・湿度環境の変化によって,最外層の角質が脱落する現象である.通常,多くの正期産児は,出生から約24~36時間後に粃糠様や膜様に薄く,あるいは脱皮したとも表現されるほど多数の落屑を呈する.早産児では生後数週しなければみられず,過期産児では,より強く落屑を認めることが多い.したがって,新生児の成熟徴候を示す指標の1つと認識されている.③脂腺過形成:皮脂腺がアンドロゲンの刺激によって肥大することが原因とされる.鼻に限局して,やや淡黄色の点状の斑や微小な丘疹として認められる.④一過性新生児多毛:一部の新生児,とりわけ早産児では,体表面が胎生毛に覆われている.胎生毛は軟毛へと生えかわるが,肩や背部,顔面などに残存して,多毛にみえることがある.⑤一過性の皮膚色素沈着:人種差にもよるが,外陰部や腋窩,乳暈,後爪郭,耳介,また下腹部では垂直方向へと線条に皮膚の色調が濃く見える場合がある.原因は不詳であるが,子宮内でのメラノサイト刺激ホルモンによる影響が考えられている.⑥大理石様皮斑:出生後しばらくのうちは,子宮外の環境に適応する能力が未発達であるために,寒い環境下において毛細血管や小静脈が拡張し,体幹や四肢に青みや紫色がかった網状の斑としてみられることがある.身体が温まると皮疹は消失する.

【新生児の生理的皮膚変化をみたら】以下

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