診療支援
治療

妊婦に多い皮膚疾患
Skin diseases of pregnant women
清島 真理子
(朝日大学病院教授/岐阜大学名誉教授)

【妊婦に多い皮膚疾患とは】①妊婦特有の皮膚疾患,②妊娠にしばしば合併あるいは悪化する非特異的皮膚疾患,③妊娠に伴う生理的皮膚変化がある(表1-8)

【妊婦に皮膚疾患をみたら】妊婦に多い皮膚疾患のなかで,特に臨床的に重要な,瘙痒を伴う皮膚疾患(表1-9)と血管拡張性肉芽腫について述べる.①妊娠に伴う瘙痒の強い疾患:〔妊娠性皮膚瘙痒症,妊娠性痒疹,pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy(PUPPP),疱疹状膿痂疹,妊娠性疱疹など〕:妊婦の18%に何らかの瘙痒があるが,妊娠前からの皮膚疾患や薬剤性などを除くと,妊娠に特有の瘙痒性疾患の発症は妊婦の0.2%である.表1-9に示すように各疾患により原因,発症時期,皮疹の分布,児の予後に違いがある.これらの疾患は著しい痒みを特徴とするが,分娩後速やかに皮疹は消失する.妊娠性痒疹は狭義には妊娠中期に著明な瘙痒を伴って生じる四肢,体幹の痂皮を伴う丘疹,搔破痕,小潰瘍である.PUPPPは妊娠後期に膨疹,丘疹,紅斑が混在する疾患であり,polymorphic eruption of pregnancyともよばれる.疱疹状膿痂疹は小膿疱が辺縁に環状に配列する紅斑が間擦部に生じ,その後全身に及ぶ.発熱,嘔吐,悪寒などの全身症状を伴い,しばしば低カルシウム血症を呈する.分娩後いったん治癒するが,次回妊娠で再発することもある.妊娠を契機に発症した膿疱性乾癬と位置づけられている.妊娠性疱疹は小水疱が辺縁に分布する浮腫性紅斑が多発する,瘙痒の強い疾患で,皮膚生検で表皮下水疱,蛍光抗体直接法で基底膜部にIgG,C3が沈着する.水疱性類天疱瘡と同様に抗BP180抗体が血中に証明される.②毛細血管拡張性肉芽腫:発症は必ずしも妊婦に限らない.妊娠時の発症は分泌増加したエストロゲンの作用による.

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?